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健康塾健康塾トピックス

第1回 血圧管理のコツ−見直しませんか生活習慣−

I.高血圧の頻度

 我が国には約3000万人から3400万人の高血圧患者さんがいると考えられています。そして高血圧の頻度は加齢とともに高まり,成人の3人に1人,65才以上では2人に1人の割合で血圧が高いと報告されています。


U.血圧が高いとなぜいけないのでしょうか

 血圧はほとんどの場合,無症状で経過し,動脈硬化などを経て様々な合併症を引き起こしてきます。症状のない分だけ発見が遅れることもままあり,心筋梗塞や脳梗塞といった大きな合併症を起こしてしまう例も多くみられます。そのため沈黙の殺人者ともいわれています。


V.血圧がいくつになったら気をつけた方がいいのでしょうか

血圧の正常値は表に示すように,収縮期血圧(上の血圧)が130mmHg未満かつ拡張期血圧(下の血圧)で85mmHg未満です。以前は収縮期140mmHg未満,拡張期で90mmHg未満が正常といわれていましたが今日ではさらに正常値が引き下げられています。 また,最も適切な血圧として至適血圧という指標が設定されていて収縮期が120mmHg未満,拡張期が80mmHg未満といわれています。

分類 収縮期血圧                     拡張期血圧
(mmHg)                    (mmHg)
至適血圧 <120           かつ         <80
正常血圧 <130           かつ         <85
正常高値血圧 130〜139       または         85〜89
軽症高血圧 140〜159       または         90〜99
中等度高血圧 160〜179       または        100〜109
重症高血圧 ≧180          または         ≧110
収縮期高血圧 ≧140           かつ         <90

W.血圧がいくつになったら治療が必要なのでしょう

 現在の高血圧治療への考え方は危険因子(心臓病や脳卒中への)をどれだけ持っているかで治療を急ぐか,少し余裕を持たせるかが決まります。もし,1.喫煙,2.高コレステロール,3.男性60才以上,女性65才以上,
4.心臓病の家系がある方は中等度の危険因子を持っているといえます。さらに1.糖尿病,2.動脈硬化,
3.心臓,腎臓,4.脳卒中(脳梗塞など)などの病気を持っている人は高い危険因子を持っていると考えます。
中等度の危険因子を持つ方は,生活習慣の見直しをして1ヶ月以内に再検査をし,3ヶ月後でも血圧が高ければ降圧薬を開始するのがよいとされています。また高い危険因子を持つ方は生活習慣改善の努力と同時に降圧薬を用いた治療をスタートさせます。


X.血圧はいくつまで下げたらいいのでしょうか

高血圧の治療をしていていくつまで下がったら満足できるかという問題があります。欧米の教科書では140/90mmHg未満を一つの規準にしています。2000年に出されたわが国の高血圧治療の規準でも140/90mmHg未満を目標としていますが,130/85mmHg程度が望ましいとしています。その一方で血圧を下げすぎるとかえってよくないという意見もあってどこまで血圧を下げるかはまだ議論の残るところです。また高齢者の血圧は大きく下げすぎないようにというのが現在の日本の考えで,80才以上の高齢者では160/90mmHg未満,70才代では150〜160/90mmHg未満であればよいとされています。しかし,まだこの決定に関する科学的な根拠は示されておらず,世界保健機構と国際高血圧学会(WHO/ISH)からの合同勧告では年齢に関係なく140/90mmHg未満が目標と設定されていて日本と西欧諸国間での意見の一致はみていません。ただし,糖尿病や腎機能障害を持っている方は130/85mmHg未満にすることが勧告されています。


Y.血圧を有効に下げるにはどうしたらいいでしょう

 降圧薬の効果はいうまでもありませんが,それ以外に血圧を下げる方法には生活習慣を改めることと,サプリメントなどの利用があります。生活習慣改善の中で最も有効と思われるものを順に列挙すると1.減量,2.食事療法,3.有酸素運動,4.食塩制限となります。食事療法には当然4.の食塩制限がはいってきますね。
 サプリメントの使用も期待される方法です。カリウム,カルシウム,タウリンやマグネシウム等がいわれています。しかし,これまでの報告をみてみるとこれといった顕著な効果は報告されていないのが現状です。個々にみると有効だった方々は居られると思いますが…カルシウムはほとんど血圧に影響を与えませんし,マグネシウム(にがり)も血圧を下げるという報告と下げないという報告と両方あり確定的ではありません。ただ,カルシウムもマグネシウムも日本人の食生活で不足しがちなミネラルのひとつですので上手に摂取することは大切です。その一方でカリウムは若干血圧を下げる効果があるようです。腎機能障害のある人は避けなくてはいけませんが,積極的に果物や野菜をとることが推奨されます。
 コエンザイムQ-10等も最近注目されている物質ですが,過去においては心臓の薬として広く使われていました。今日は血圧の調節作用もあるとのことですが,これは1日使用量が200mg程度の時に効果が見られているようです。これは我が国で目安といわれている量の3〜6倍程度です。一般的な量は30〜60mg/日なのですがこの量で血圧が低下するという報告はありません。しかし,活性酸素を消し動脈硬化を予防するなどの効果は期待できます。


Z.特定保健用食品ってなんだろう

特定保健用食品とは科学的試験結果に基づいて厚生労働省の健康に有用との承認を得た食品です(もっとも試験は医薬品に対するものよりもずっと簡単ですが…)。現在,高血圧に対しての特定保健用食品としては杜仲を利用したものとアンギオテンシン変換酵素という物質を抑える作用をもったペプチド(アミノ酸の連結したもの)を利用したものの2つのグループに分かれています。


[.血圧を下げる効果が確実なのは?

血圧を下げる効果の確実なものを挙げてゆくと,まず,特定保健用食品があげられます。アミール,ペプチドおみそ汁,ペプチド茶,杜仲どれも効果が期待できます。大体,血圧で5〜10mmHgくらい下がる可能性があると思います。生活習慣の改善でも血圧は低下します。中でも減量は効果的です(体重の過多のある方)。ただし,この体重減量の中には食事療法も運動療法も塩分制限も取り入れられている可能性も高く,生活習慣改善の集大成と考えても良いかもしれません。ほかにはカリウムの積極的な摂取も期待が持てます。これは塩分過剰の人で効果があるようです。


IX.どの様に血圧を管理するか

血圧の管理の目的は単に血圧を低下させることだけではなく,脳卒中や狭心症や心筋梗塞,動脈硬化などの予防あるいは進展を防止することにあります。たとえば脳卒中の発症が大きく減少するのは収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg未満の時です。ですから血圧管理の方法としては少なくとも140/90mmHg未満を一つの目標としてゆくことが望まれると思います(日本の治療のガイドラインでは130/85mmHg位がいいとしています)。
 生活習慣改善や特定保健用食品を利用した血圧管理は非常に重要で,かつ自宅でできる健康管理として広く受け入れられることが望ましいと思います。しかし,その限界を認識することも重要です。個人的な考えですが,危険因子(先ほど述べました)としては血圧が150/95mmHg程度までの方はまず,減量,食事療法,塩分制限,アルコールの制限などに加えてアミール,ペプチドおみそ汁などの特定保健用食品を活用していただけるといいと思います。
 ただ,危険因子が少なく血圧が150/95mmHgを越えてくるようであればまず,降圧薬で血圧を下げながら生活習慣を見直してゆくという手法の方が現実的かと思います。生活習慣の改善により,降圧薬の中止も十分可能だからです。決して降圧薬は飲み始めたら一生と限ったものではありません。血圧をはじめとした身体の管理は長く行ってゆかなくてはならない分,十分な理解と納得の上で行うことが大切だと思います

おぎもと内科クリニック 院長 荻本剛一