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健康塾健康塾トピックス

第2回 動脈硬化と高脂血症

コレステロールと中性脂肪の役割

 コレステロールは主に肝臓で作られ、身体の細胞ひとつひとつを包んでいる細胞膜の重要な成分です。そしてホルモンの重要な原料でもあります。つまり、身体にとって必要かくべからざるものと言ってよいのでしょう。コレステロールは食事からも1日に300m〜500mg程度摂っていると考えられています(外因性経路)。一方、肝臓での合成はそれを大きく上回り、1000〜1200mg程度が作られています(内因性経路)。
 一方、中性脂肪は主にはエネルギーを貯蔵する倉庫の役割をしています。


コレステロール−体内での旅−

 肝臓で作られるコレステロールは、はじめは中性脂肪を多く含んだVLDLという脂肪滴(脂肪のかたまり)です。これが身体の毛細血管などにある酵素の力を借りて中性脂肪が代謝され、コレステロールが主成分のLDLに変化します。そしてこのLDLは、LDL受容体という受け皿から取り込まれて代謝されます。しかし、LDLが大量に血液の中に存在すると、処理しきれないで血管などに取り込まれてしまいます。こうして動脈硬化の礎が築かれてしまうのです。


高脂血症とは

 血液の脂質の代表格である総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のどれかが高いものをいいます。どの位になると異常かというと、空腹時で以下の時にいいます。

○総コレステロール 220mg/dl以上・・・高コレステロール血症
○中性脂肪 150mg/dl以上・・・高中性脂肪(高トリグリセライド血症)
○LDLコレステロール 140mg/dl以上・・・高LDLコレステロール血症

高血圧症の原因となる病気

 高脂血症は生活習慣からもたらされるだけでなく、時にはホルモンの異常や肝臓病、糖尿病などの代謝病、薬物の影響などで引き起こされることがあります。ですから高脂血症の診断に当たっては、そのような原因がないかどうかをきちっと調べる必要があります。
 ・一次性高脂血症:いろいろな病気がない
 ・二次性高脂血症:
       −−甲状腺機能亢進症
       −−ネフローゼ、腎不全
       −−黄疸、アルコール性肝障害、肝癌
       −−クッシング症候群、末端肥大症
       −−肥満症、糖尿病、高尿酸血症、痛風
       −−薬物:アルコール、降圧薬(サイアザイド、β遮断薬)、ステロイド剤、向精神薬、経口避妊薬


善玉と悪玉コレステロール

 コレステロールにも動脈硬化を進めるコレステロール(LDLコレステロール)と、それを予防するコレステロール(HDLコレステロール)との2種類があります。LDLコレステロールは肝臓から放出されたVLDLが代謝されてできてきます。そして、最後に肝臓のLDL受容体で取り込まれます。逆に、細胞中のコレステロールの量が増してくると、LDL受容体は減ってきます。ですから血液の中にはLDLコレステロールがだぶついていて、これが血管に入り込んでいてしまうというわけです。これが動脈硬化の引き金になります。


どうして高脂血症になるのでしょう
 

 高コレステロール血症では 1.カロリーの摂りすぎ、 2.摂った脂肪の量が多く質が問題、3.コレステロールの摂取量が多いなどが挙げられ、また高トリグリセライド血症では、アルコールの飲み過ぎや糖分(ブドウ糖、果糖、砂糖)の摂りすぎが原因として挙げられます。


高脂血症の治療法

 治療の目的は高脂血症によってもたらされる血管合併症を予防していくことです。その一つは口からはいるコレステロールを減らすこと。もう一つは運動を介して善玉のコレステロールをふやし,LDLコレステロールが肝臓などで取り込まれやすくし血管に入っていかないようにすること,そしてクスリを使って肝臓で作られるコレステロールを減らすことです。これに活性酸素を減らすような食事や生活を心がければなお効果的です。単独のものに頼るのではなく複数を組み合わせることが大切です。でも大概は生活に問題のある方が多いのではないでしょうか?高脂血症の治療において生活の見直しはやはり基本的なものです。


食事療法のポイント

  ○食行動の改善・・・1日3食たべていますか?
         ・・・食事量はなるたけ均等に
         ・・・早食い、どか食い、ながら食いはやめて!

  ○食事内容の改善・・バランスのとれた食事をする
          ・・店屋物が多くないですか?

  ○脂肪・・・・・・・質と量を考える−−−肉より魚がお勧め
     ・・・・・・・魚の不飽和脂肪酸がコレステロールを減らします
     ・・・・・・・オイルにも気を使いましょう

脂肪酸  多く含まれる食品 働きの特徴
多価不飽和脂肪酸  n−3系 魚など 血液の流れをよくする
LDL、HDLどちらも下げる
 n−6系 サラダオイルなど 酸化されやすいので動脈硬化を進行させる
恐れがある
 一価不飽和脂肪酸 オリーブオイルなど LDLコレステロールを下げる
酸化されにくい
 飽和脂肪酸 肉など LDLコレステロールを上げ、動脈硬化を
進行させる

○n3多価不飽和脂肪酸---しそ油、エゴマ油、カラシ油などのα-リノレン酸、DHA、EPA
○n6多価不飽和脂肪酸---ごま油、コーン油、リノール酸など、大量摂取でHDLコレステロール低下
○一価不飽和脂肪酸---他に菜種(キャノーラ油)、べに花油(リノール酸の多従来型もあるので注意)
○飽和脂肪酸:一価不飽和脂肪酸:多価不飽和脂肪酸の割合は3:4:3にするのがよいといわれています。
○コレステロールの多い食品に注意
○食物繊維をたっぷりと・・・食物繊維は胆汁酸の排泄を促進し、コレステロールを減らします
○抗酸化食品を積極的に・・・・・コレステロールの酸化を防ぎます。緑黄色野菜を積極的に!


運動療法の意義とポイント

 運動はなかなか継続することの難しい治療法かもしれません。特に30〜50台といった年代は厚生労働省の調査結果を見てもなかなか時間が摂りにくい一面もあるようです。しかし,運動の週間のある人の方が死亡率が低いという報告もあり,積極的に行うことをお勧めします。ただし,糖尿病などの心臓病危険因子をお持ちの方は先にメディカルチェックを行ってからがよいと思います。
  ○運動量の目安=100〜150Kcal/日
  ○一週間に3日以上
  ○30分〜40分を目安に
  ○軽く汗ばむ程度
  ○脈拍は大体120/分くらい・・・正確には138−年齢/2
  ○有酸素運動----全身の筋肉を使う運動----
      −ウォーキング,水泳,エアロビックダンス,サイクリング,ジョギングなど
      −短距離走や重負荷の運動は脂肪より糖質の燃焼をおこし,脂肪を減らすには適しません。
      −膝や腰に問題がある場合にはプールでのウォーキング,水泳が効果的。


薬物療法

 −−コレステロールを下げる薬物−−
  ・HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)・・・メバロチン、リポバス、ローコール、リピトール、リバロなど
  ・陰イオン交換樹脂・・・・コレバイン、クエストラン
  ・プロブコール・・・・ロレルコ、シンレスタール

 −−中性脂肪を下げる薬物−−
  ・フィブラート系製剤…ベサトールSR、リパンチル
  ・ニコチン酸製剤…コレキサミン、ペリシット
  ・エイコサペンタエン酸…エパデールS、エパデール

 今,なぜスタチン系の薬がもてはやされているのでしょうか。それはコレステロール低下作用以外に抗動脈硬化作用が明らかで心筋梗塞や狭心症といった病気の発症も予防し,発症した人の長期予後も改善することがわかってきたからです。高脂血症の正常化は動脈硬化で狭くなった血管を開く効果も期待させてくれます。
 しかし,薬には必ず光の部分と陰の部分を持ち合わせています。今飲んでいる薬で影響を受けることがあるのかどうか検討して使い始めることが肝要だと思います。

患者カテゴリー 脂質管理目標
冠動脈疾患 LDLコレステロール以外の主要危険因子 TC
(総コレステロール)
LDL−C
(LDLコレステロール)
HDL−C
(HDLコレステロール)
TG
(中性脂肪)
なし 240未満 160未満 40以上 150未満
なし 1ないし2 220未満 140未満
なし 4ないし4 200未満 120未満
あり 180未満 100未満

危険因子:加齢(男性45歳、女性55歳以上)、高血圧、糖尿病、喫煙
     冠動脈疾患の家族歴、低HDLコレステロール血症(日本動脈硬化学会,2000)

 そして、上の表に示したように、患者さんそれぞれの危険因子に合わせて最良の治療プログラムをたてるようにしてゆきます。ただ、最近の傾向として、LDLコレステロールをもっと下げたほうが予後がよいという報告が続いており、危険因子を多く持つ方は積極的な治療が望まれます。


おぎもと内科クリニック 院長 荻本剛一