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糖尿病、大変聞き慣れた病気です。糖尿病とはインスリンの効果不足から血糖が高くなり、いろいろな代謝の異常を起こしてくる病気のことです。
元来、糖尿病という病気は昭和30年代前半にはまだそう多い病気ではありませんでした。ところが平成14年に厚生労働省が調査した糖尿病実態調査では驚くべき事に糖尿病か糖尿病が強く疑われる方は約700万人、疑いの方を含めるとなんと1620万人、成人の6人に1人は糖尿病という結果で、数の上で平成9年に比べて250万人増えています。
それでは、血糖はどうして高くなってしまうのでしょうか。
腸で吸収された糖分は肝臓へ運ばれインスリンの働きにより肝臓の細胞に取り込まれます。そしてその残りが身体にまわります。その残りの糖分はこれもまたインスリンの作用で筋肉と脂肪細胞で取り込まれて行きます。ですからインスリンの働きは血糖を管理する上で重要なのです。
血糖をあげるホルモンは甲状腺ホルモン、カテコラミン、副腎皮質ホルモン、グルカゴンなどいろいろありますが、インスリンは体内で唯一血糖を下げるホルモンです。日本人は体質的に欧米人に比べてこのインスリンを分泌する能力が低いことが知られています。しかし,戦後の日本社会は生活の欧米化に伴い、脂肪の摂取量が飛躍的に伸び、昭和20年代の3倍にも達するとも言われています。
そのような中で、徐々に肥満者の増加があり、内臓脂肪の蓄積からインスリンの効きが低下するいわゆる内臓脂肪症候群またはインスリン抵抗性症候群”と呼ばれる状態となります。当初は効かない分、インスリンが沢山出て何とか血糖を落ち着かせていますが、だんだん膵臓(インスリンを出す臓器です)の予備力が低下し、ついには血糖が高くなってくるわけです。
“内臓脂肪症候群またはインスリン抵抗性症候群”は血管を収縮させ、高血圧1を惹起したり、血液のコレステロール、中性脂肪を増加させ高脂血症2を起こしてきます。これらは血糖値の上昇3、肥満4と相まって「死の四重奏」と呼ばれています。
糖尿病には1型糖尿病、2型糖尿病の2つの形があります。日本では95%の患者さんが2型糖尿病です。2型糖尿病というのは表にもあるように中年で発症して肥満や肥満の傾向のある方に多くみられます。しかし、前にも述べたように日本人はインスリンの分泌能が低いため肥満がなくても2型の糖尿病の状態になる方もいます。
糖尿病にありがちな症状にはどの様なものがあるのでしょう。表に示します。ここで気をつけなくてはならないのはこれらの症状はかなりひどくなってから出現するものも多く、無症状であることが多いのだと言うことです。
糖尿病の判断は左の表に示したように行われます。
糖代謝の異常を知るのに最も感度が高い検査法が糖負荷試験です。
調布市での基本健診では空腹時血糖とHbA1cという4週から8週の血糖の平均を示す物質を測っていますがどちらも感度としては不十分です。左の図に示すように、HbA1cは糖尿病でも正常値を示すことが多く、これで診断することはできません。ただ、6.5%を超えた場合は正常の血糖の方はほどんどいないので糖尿病と考えられます。
糖負荷試験では正常、境界型、糖尿病型の3群に分けられますが境界型とは何でしょう。境界型とは正常でもなく糖尿病型にも属さないということです。
何故、この境界型を取り上げられるかというと境界型では空腹時血糖が正常で食後に血糖があがるという方が多く見受けられます。この様な方々は健康診断ではHbA1cが正常の中でも若干高いかなと言うくらいにとどまり、空腹時血糖は正常と言うことがほとんどです。しかし、動脈硬化は糖尿病の患者さんに迫る勢いで進行しますし、この境界型から年間数%づつ実際の糖尿病に進展してゆきます。ですからこの境界型の時点から糖尿病に順じた治療が必要となるわけです。境界型から糖尿病への進行をどの様にくい止めるか。
生活習慣を改めることと薬の使用とどちらが効果的であったかを比較する試験ではどちらも効果はあるのですが、生活習慣を改めることでなんと60%近くも糖尿病の発症が抑えられました。
糖尿病は血管の病気をもたらします。細小血管症と呼ばれる糖尿病に特徴的なものと大血管症といわれるいわゆる動脈硬化に属するものとがあります。細小血管症によりもたらされる症状は糖尿病の3大合併症として知られ、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経症があります。糖尿病性網膜症は我が国で失明にいたる原因の第1位で毎年、3000人の方が失明しています。また糖尿病性腎症は我が国で透析療法を受ける方の原因の第1位で2003年には約14000人の糖尿病患者さんが透析を開始しています
糖尿病は病状が進行すると様々な合併症が出現してきます。そしてある時点を過ぎるとどんな努力をしても改善することがなくなってしまいます。ですから躊躇することなく、治療を開始することが必要です。
治療の原則は1.食事療法、2.運動療法、3.薬物療法です。食事と運動に関しては後に譲るとして薬物療法に関して概説したいと思います。糖尿病の薬物治療には経口薬とインスリン療法の2つがあります。肥満や運動不足でインスリン抵抗性が高まっているときにはアクトスやメルビン、グリコラン、ジベトスBといったインスリン抵抗性を改善する薬を使用します。アクトスは脂肪細胞を小型化してインスリンの効きをよくする作用があるのですが、食事が守れないと小型化した脂肪細胞が再び肥大してかえって体重が増してしまうこともあるので注意が必要です。
また、インスリンの出が悪くなっている場合にはインスリンの分泌を促す薬を使用します。その代表格がSU薬と呼ばれるものでアマリール、ダオニール、オイグルコン、グリミクロンなど様々なものがあります。この薬はインスリンの分泌を促し、血糖を下げます。体重が太りやすく、食事療法をきちんと守っていただかないと血糖は一時的によくなっても、すぐに上昇してきてしまいます。さらに、この薬は膵臓に鞭を打ってインスリンを出させるわけで、長期的にはインスリンの分泌が低下してしまうことも知られています。最近では速効性のしかも作用時間の短い薬(スターシス、ファスティック、グルファスト)が使用されています。これらは食前の血糖はさほど高くなく、食後に血糖があがってしまう方に使います。
α-グルコシダーゼ阻害薬は腸からの糖分の吸収をゆっくりにすることで血糖を押さえます。食後の血糖上昇を抑える効果があります。
血糖が高くなる理由にはインスリンの作用が減弱してしまう“インスリン抵抗性”と出が悪くなる“インスリン分泌の低下”があります。治療に当たっては糖尿病がどの様な状態にあるかを考えて薬を投与します。血糖はいま説明したような理由が組み合わさって高くなるわけですが悪いことに血糖が高くなることにより細胞の機能が障害されてさらにインスリン抵抗性やインスリン分泌低下が強くなる「糖毒性」が出現する事があります。そうなってしまった場合には一時的にインスリン療法を行うこともあります。無理をして飲み薬で治療をしていると膵臓が疲弊してインスリンを出せなくなってしまうことがあるからです。